倫理と知性 2007 9 16
私は、数年前から、
「経済発展にも倫理が必要。
モラルなき経済発展は、おかしい」と訴えてきました。
これに対して、
「金儲けして何が悪い。
金さえ儲かれば何をやってもよい」という圧倒的な声に、
私の訴えも、簡単に、かき消されてしまいました。
拝金主義が主流となった時代は、
もはや私の出番はなくなったと思っていました。
しかも、ここ数年は、拝金主義と同時に、
「反知性」が台頭した時代でもありました。
つまり、拝金主義と反知性が、時代の主流だったと言えるかもしれません。
こう考えたのは、私だけではなかったと安心しました。
書店で、榊原英資氏の本を見つけました。
「幼児化する日本社会 拝金主義と反知性主義」
ここ数年の拝金主義については、多くの人が知っていると思います。
しかし、重要なのは、拝金主義と同時に反知性主義も台頭したのです。
「敵か味方か」、「白か黒か」という二分法は、知性の退化そのものです。
こうした二分法は、反知性を象徴していると思います。
同時に、「頭脳が、思考停止状態に陥っている」と言えるでしょう。
世界の歴史を振り返れば、
こうした二分法が、いかに悲劇や不幸を巻き散らかしてきたか、わかるでしょう。
人類は、こうした悲劇や不幸を克服するために、数世紀も費やしてきたのです。
今の時代は、倫理と知性が死んでいく時代なのか?
代わって台頭するのが、拝金主義と反知性主義か?
そうだとするならば、実に悲しい。
書評 book review 「TV」 2007 4 30
書 名 テレビは日本人を「バカ」にしたか?
大宅壮一と「一億総白痴化」の時代
著 者 北村 充史 出版社 平凡社新書
最近の低俗なテレビ番組を批判する時に、
よく使われる有名な台詞、
「日本人、一億が総白痴となりかねない」という言葉について、
「テレビの歴史」という視点から論じた本です。
この本で興味深いのは、若き日の田中角栄郵政大臣が登場することです。
「低俗番組追放と放送法の改正」というところで、
田中角栄郵政大臣の発言が出てきます。
(以下引用)
「最近巷間にテレビジョンは、
一億総白痴化するものであるなどと言われているのは、全く遺憾でありまして、
わたくしは、テレビジョン放送局の予備免許をいたした際にも、
じゅうぶん、この点に留意し、各放送会社に対し、
番組の編成にあたっては、娯楽に偏重しないように、
教育教養をも、じゅうぶん考慮すべきことを要望した次第であります」
(「キネマ旬報『テレビ大鑑』に寄せる」)
「商業放送に対しては、全放送の三十パーセントを、
教育・教養番組にあてるよう条件をつける。
娯楽や青少年番組は午後十時までに終わらせる。
これらを守るべく、各放送局は自主的に放送番組審議会を設けるべきだ」
朝日新聞 昭和三十二年八月二十一日付
「一億総白痴化」の元凶である低俗番組、俗悪番組をなくして、
青少年を保護すべきというのが行政のもうひとつの課題だった。
(以上引用)。